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Last update 2008.2.5


08/2/5
今を逃すとまた時間が取れなくなってきそうなので、その前に更新しておくことにします。
イラストとWeb素材をいくつか追加。
それと、サイト内のヘンな仕様になっていた部分を少しとっぱらってみました。

さてさて。
何回か前のトップ記事で、フランスのモンサンミッシェルと聖ミカエルの事を書いた時、
「ミカエルは戦士や光や炎の天使として扱われる事が多いが、他にももう一つ別の側面がある」
という事に少しだけ触れました。
今回はその「別の側面」と関係のある話をしようかなと思います。




上の写真はヴェネツィアに行った時に撮りました。
ヴェネツィアの周囲の潟には小さな島がいくつか点在しており(ガラス細工の島・ムラーノ島や
レース編みの島・ブラーノ島などが観光面で特に有名です)、そのうちの一つにサン・ミケーレ島という島があります。
サン・ミケーレというのは伊語で「聖ミカエル」を意味するため、要するに「聖ミカエルの島」というわけで、
かのモンサンミッシェルと似たような立地と名前を持つ島だとも言えます。
そのサン・ミケーレ島の外観を、水上バスの上から撮った写真。


ですがサン・ミケーレ島にはちょっと変わった所があり、基本的には人は住んでいない…
というか、より正確には「生きている人は」住んでいない島だったりします。
では誰が住んでいるのかと言うと、ここは島全体が霊園・つまりお墓になっている島なのです。
洋上からの風景が「ん?」と思うような不思議な姿に見えるのも、外壁の内側に建物がほとんど見えず、
かと言って放置されている島でもなく、手入れされた感じの樹々(イトスギでしょうか)だけが見て取れるために、
普通に人が住む島とはなんとも違う印象を与えるのだと思う。


ここで最初の、大天使ミカエルの話に戻りますけども。
ミカエルには「最後の審判の時、善人と悪人の魂を裁く天使」という性質もあると考えられていて、
そのため善悪を正しく裁く者の象徴として天秤を・悪に対する懲罰の象徴として剣(もしくは他の武器)を、
同時に両手に携えた姿で描かれる事もあります。
(これはタロットカードの「正義」の絵柄とも共通するイメージでもあります)
日本で言うと閻魔さまみたいな役職かな。
つまりこのヴェネツィアの墓地の島に「サン・ミケーレ」の名がついているのは、人間の魂が
死後には大天使ミカエルの裁きに委ねられる…と思われていた事にも関係があるのかも知れません。
実際、島の入り口の門の上には、天秤を持つミカエルの姿が彫られていました。
その写真もありますのでよろしければご覧ください。
→こちら

このようにミカエルに付随する「魂の審判者、天秤を持つ冥府の管理人」というイメージは、
あのエジプト神話のアヌビスの姿がルーツになっているとも言われています。



昔のヴェネツィアの人が街から離れた島に墓地を作った理由は、単に衛生上の都合によるそうなのですが…
 (ちょっとイヤンな感じの話になるけど、パリなどは市内に墓地があるので
 大昔には墓地から出る汚水が土壌や地下水に流れ込み、それが市内の衛生事情を
 よけい惨憺たる有様にしていた時代があったらしい)
「あの世とこの世の間は川や海などで隔てられていて、死者は舟に乗って来世へ渡る」という話は、
世界の多くの地域の神話や伝承の中で、なぜか割と普遍的に見受けられるイメージでもあります。
それもあって、サン・ミケーレ島を訪れた時、私の気分の上ではここが現世ではないような
とても不思議な意味のある場所のように思えました。
まさにアルノルト・ベックリンが絵に描いた「死の島」そのものだなあと。
(サン・ミケーレ島の他に、クロアチアあたりにも霊園島というのが存在するらしく
ベックリンはそこをモデルにあの絵を描いたのでは?という説もあるようです)


 ────────────────────


あと、非常に余談になりますけども。
アドルフ・ヒトラーもベックリンがなかなか好きだったらしく、何枚か存在する「死の島」の作品群のうち
一枚を所有していたそうです。
確かに、「ロシア外相のモロトフとヒトラーが会見している場面の背後の壁に『死の島』の絵がかかっている」
という写真が、私の手元の本に載っていました。
 このモロトフさんというのは、「モロトフのパン籠」「モロトフ・カクテル」とかいう言い回し
 (それぞれ焼夷弾と火炎瓶の意味)の語源になったあの人ですな。




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